青空文庫

「硯友社の勃興と道程」の感想

硯友社の勃興と道程

けんゆうしゃのぼっこうとどうてい

――尾崎紅葉――

――おざきこうよう――

初出:「きのふけふ」博文館、1916(大正5)年3月

内田魯庵94

書き出し

一飯田町の中坂——馬琴と「まどき」と思案外史震災で破壊された東京の史蹟のその中で最も惜まれる一つは馬琴の硯の水の井戸である。馬琴の旧棲は何度も修繕されて殆んど旧観を喪ってるから、崩壊しても惜くないが、台所口の井戸は馬琴の在世時のままだそうだから、埋められたと聞くと惜まれる。が、井戸だから瓦や土砂で埋められても旧容を恢復するのは容易である。この馬琴の硯の水の井戸は飯田町の中坂の中途、世継稲荷の筋向い

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