こうじょうしんぶん
初出:「新潮」1932(昭和7)年8月
書き出し
一「タッちゃん、なに読んでるの?」これも読書組の、トシが傍へよってきて、のぞきこんだ。馴れた臭気だけれど、ムッとめまいするような煙草の匂がした。「いやよ」タツは、慌てて読んでたものをかくした。うすッぺらな、ガリ版ずりの「赤煉瓦」というのだった。「意地わる!」作業帽の下から、赤ちゃけた頭髪をハミ出さしたトシは、タツをぶつ真似して、ゴロリと芝生の上へ腹這いになった。九時半の休憩時間は十五分しかなかった…