青空文庫

「父の死」の感想

父の死

ちちのし

初出:「新思潮」1916(大正5)年2月号

久米正雄33

書き出し

一私の父は私が八歳の春に死んだ。しかも自殺して死んだ。二その年の春は、いつもの信州に似げない暖かい早春であつた。私共の住んでゐた上田の町裾を洗つてゐる千曲川の河原には、小石の間から河原蓬がする/\と芽を出し初めて、町の空を穏かな曲線で画つてゐる太郎山は、もう紫に煙りかけてゐた。晴れた日が幾日も続いて乾いた春であつた。雪解時にもかゝはらず清水は減つて、上田橋の袂にある水量測定器の白く塗られた杭には、

2025/10/07

fabaa54c8089さんの感想

松代まち歩きの時に、解説の宮下さんから皆神神社の宝物庫に豊栄小学校の奉安殿が利用されていると知った。戦後、皆神神社に移築されたものだ。この奉安殿は豊栄小学校にある際は、耐火構造で校舎から離れた場所に建てられていた。それは明治以降、火災により全国各地の学校校舎が焼失し、御真影も焼失する事件が頻発したためだと知った。校長が責任を取り、御真影を取り出そうと火事の中に飛び込む事態も起きた。 この久米正雄の父のように、たかだか御真影という名の1枚の絵のために命を犠牲にする必要があったのか。今とは異なる、近代日本の狂気を垣間見える小説でした。

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