とうほくのいえ
書き出し
東北に子の住む家を見にくれば白き仔猫が鈴振りゐたり東京に生れて東京にそだち東京で縁づいたFが、はじめて仙台に住むことになつたのは昭和十六年の夏であつた。Fの夫が商工省から仙台の鉱山局に転じて行つたのである。そとに出ることをひどく面倒がる私も、私としては気がるによばれて仙台の家にいく度か泊りに行つた。十六年と十七年の二度の秋、それから十八年の春と、そのたびに十日位づつは泊つてゐたから、つまり三十日間…