きょじゃく
初出:「新生」1908(明治41)年2月1日
書き出し
友と二人でブラリと家を出た。固より何處へ行かうといふ、的もないのだが、話にも厭きが來たので、所在なさに散歩と出掛けたのであツた。入梅になッてからは毎日の雨降、其が辛と昨日霽ツて、庭柘榴の花に今朝は珍らしく旭が紅々と映したと思ツたも束の間、午後になると、また灰色の雲が空一面に擴がり、空氣は妙に濕氣を含んで來た。而て頭が重い。「厭な天氣だね。」「こんな日は何うも氣が沈んで可けな…