すがのつつみのさくら
書き出し
花に忙しき春哉。裸男ひとりにて、新宿追分より京王電車に乘りて、調布に下る。南を指して行く。多摩右岸一帶の丘陵低く横はる。大山を左翼として、丹澤の連山その上に遙か也。十數町にして、多摩川に達す。前岸に櫻花の連なるを見る。これ近年櫻の名所となりたる菅の堤也。矢野口の渡に至れば、渡船あるかと思ひの外、土橋かゝりて、一錢五厘の橋錢を取る。上流の青梅の萬年橋より、下流の六郷橋までの間、多摩川に往來を通ずるは…