青空文庫

「翻訳のむずかしさ」の感想

翻訳のむずかしさ

ほんやくのむずかしさ

初出:「書物」1950(昭和25)年8月

神西7

書き出し

飜訳文芸が繁昌だそうである。一応は結構なことだ。あの五十年という制限の網の目がだいぶ緩められて、生きのいい魚がこっちの海へも泳いできて、わが文化の食膳にのぼせられる。悪かろうはずはないが、物事には必ず善悪の両面がある。水から揚がるのは、いい魚ばかりとは限らない。お客さんは腹が空いているから何でも食う。そこで料理人は転手古舞で、材料の吟味はもとより、ろくろく庖丁も研ぐひまがないという景気になる。つま

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