青空文庫

「下町歳事記」の感想

下町歳事記

したまちさいじき

正岡23

書き出し

時雨・雪・三味線堀亡くなられた泉鏡花先生のお作の中でも、「註文帳」は当然代表作の一つに数へていいものだらう。殊に雪もやひの日の鏡研ぎ五助の家のただずまひ、雪明りの夜の吉原の撥橋、おなじ雪の夜更けの紅梅屋敷——情が、姿が、廓の景色が、マザマザ手に取るやうに浮かんで来てたゞたゞ敬服のほかはない。が、あの五助の家のくだりであぐねてゐた空から白いものがチラつきだし、軈て「唯一白」の大雪となる。あの大雪の有

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