青空文庫

「生活の探求」の感想

生活の探求

せいかつのたんきゅう

初出:「書きおろし長篇小説叢書 第二巻」河出書房、1937(昭和12)年10月27日発行

島木健作408

書き出し

一今年は春から雨の降ることが少なかつた。山林を切り開いて作つた煙草畑まで、一町餘りも下の田の中の井戸から、四斗入りのトタンの水槽を背負つて、傾斜七十度の細い畦道を、日に幾度となく往き還りする老父の駒平の姿はいたいたしい。時には握飯を頬張りながら、葉煙草に水をやつてゐるやうな姿を見ることもある。今年大學にはいつた息子の杉野駿介は、病氣が治り、健康がすつかりもとに返つても、なぜか東京へ歸らうとはしなか

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