しじへんそう
初出:「別冊芸術」1949(昭和24)年3月
書き出し
母上さま、——久しくためらつてゐましたこの御報告の筆を、千恵はやうやく取りあげます。じつは姉上のお身の上につき申しあぐべきことのあらましは、もう一月ほど前から大よその目当てはついてをりました。だのに千恵は、「わからない、わからない」と、先日の手紙でも申しあげ、またつい一週間前の短かい手紙にも繰りかへしました。それもこれも嘘でした。いいえ、嘘といふよりむしろ希望のやうなものでした。つまり千恵は、お母…