青空文庫

「巣離れの鮒」の感想

巣離れの鮒

すばなれのふな

初出:「釣りの本」改造社、1938(昭和13)年

書き出し

寒い冷たいとはいうが、もう春だ。そろそろと水が温んでくる。川や沼の面に生色ある光がただよって、いつの間にか堤防の陽だまりに霜ぶくれの土を破って芝芽が小さな丸い頭を突き出すと魚も永い冬の蟄居から眼ざめるのである。鮒は晩秋水の深みに落ち込んで腐れ藻の下や泥底に集団をなして寒い一冬を越すのであるが、寒が明けて陽ざしが明るくなってくると、集団を解いて静かに動きはじめる。これを巣離れの鮒というのである。鮒は

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