かじかのたまごについて
初出:「釣趣戯書」三省堂、1942(昭和17)年
書き出し
私の、山女魚釣りを習った場所は奥利根であった。この地元では春先、山女魚を釣るのに餌は鰍の卵と、山ぶどうの虫を餌に用いたのである。しかし、この二つの餌のうち、鰍の卵の方が断然と成績がよろしい。それは、早春の山女魚は鰍の卵を常食としているためであろうと思う。けれど、この卵を人間が食べると甚だおいしくないのだ。鰍の肉は、天ぷらにしても、焼き枯らした味噌田楽にこしらえても、あれほどおいしいのに、また鮎もは…