ひびこうしゃ
初出:「サンデー毎日 新春特別号」1929(昭和4)年1月
書き出し
市内電車の隅の方に、熱心に夕刊を読んでいる鳥打帽の男の横顔に目をそそいだ瞬間、梅本清三の心臓は妙な搏ち方をした。「たしかに俺をつけているんだ」清三は蒼ざめながら考えた。「あれはきょう店へ来た男だ。主人に雇われた探偵にちがいない。主人はあの男に俺の尾行を依頼したんだ」清三は貴金属宝石を商う金星堂の店員だった。そうして、今何気ない風を装ってうす暗い灯の下で夕刊を読んでいる男が、今日店を訪ねて、主人と奥…
ひずみんさんの感想
ただ、ものすごく人に愛されている人だった。少し悲しいけれど、結末としてはみんな幸せでよかった。