青空文庫

「茶話」の感想

茶話

ちゃばなし

12 初出未詳

12 しょしゅつみしょう

薄田泣菫86

書き出し

主人の頭を打つ女むかしは男は月代といふものを剃つたものだが、それは髭を剃る以上に面倒くさいものであつた。伊勢の桑名に松平定綱といふ殿様があつた。気むづかしやで、思ふ存分我儘を振舞つたものだが、とりわけ月代を剃るのが嫌ひであつた。「我君、だいぶお頭が伸びましたやうでございますが……」家来がかう言つてそれとなく催促しても、殿様は余程気軽な時でないと、滅多に月代を剃らうとは言ひ出さなかつた。やつと口説き

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