しゅんちゅうごこく
初出:「新小説」1906(明治39)年12月
書き出し
二十四この雨は間もなく霽れて、庭も山も青き天鵞絨に蝶花の刺繍ある霞を落した。何んの余波やら、庵にも、座にも、袖にも、菜種の薫が染みたのである。出家は、さて日が出口から、裏山のその蛇の矢倉を案内しよう、と老実やかに勧めたけれども、この際、観音の御堂の背後へ通り越す心持はしなかったので、挨拶も後日を期して、散策子は、やがて庵を辞した。差当り、出家の物語について、何んの思慮もなく、批評も出来ず、感想も陳…
3be6efe170a2さんの感想
第24章から始まる。「春昼」の続編。春昼では他人事だった物語が俄然わが身にふりかかる。美女あり色彩豊かな風景あり、細かな描写に想像が追いつかないきらびやかな世界でした。