カラブウないしんのうでんか
初出:「中央公論 第四十五年第十二號五百十五號」中央公論社、1930(昭和5)年12月1日
書き出し
1食卓の人々は、つと顔を見合わせた。かすかに叩戸の音が聞えた——ような気がしたのだ。夜の八時過ぎだ。おそい晩飯だ。小作人ドルフ・ホルトン—— Dolf Horton ——の家である。野良を終っても、何やかや仕事が残って、いつも食事が遅れる。英吉利の四月は、春とはいってもまだ冬の感じだ。八時にはもう真っ暗で、ことに今夜は霧がある。しっとり濡れた濃い闇黒が戸外に拡がって、この、ブリストル市に通ずる田舎…