青空文庫

「大島行」の感想

大島行

おおしまゆき

芙美子27
下町風土季節の移ろい旅の情景叙情的静謐

書き出し

一信思ひたつた旅ながら船出した咋夜から今朝にかけて、風雨激しく、まぢかく大島の火の山が見えてゐながら上陸が仲々困難でした。本當は、夜明けの五時頃にはもう上陸が出來るはずなのに、十時頃までも風力の激しい甲板の上に立つて、只ぢつと島裾を噛んで行く、白い波煙を見てゐるより仕方もありませんでした。遠くから見るとまるで洗つたすりばちを伏せて、横つちよに葱でも植ゑてあるやうな、そんなひどく味氣ない島です。——

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