青空文庫

「壁」の感想

かべ

初出:「光画」1932(昭和7)年6月号

書き出し

群青のところどころ剥げて、木目の寂びてあらわなる上に、僅かに仏像が残っている。みずからの渉跡を没することでみずから無の示す空寂の美わしさを現わす仏像を載せて、壁はみずからを時の錆にまかす。なぜそこに壁があったのか。なぜそれに仏像が描かれねばならなかったのか。壁があったのは、それは人が住むためにであろう。仏像が描かれたのは、その壁を通して、人がそれをそこに見たかったからであろう。かつて人間が巌で囲ま

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