もぐら
初出:「文章倶楽部」1926(大正15)年9月号
書き出し
一灌木と雑草に荒れた叢は、雑木林から雑木林へと、長い長い丘腹を、波をうって走っていた。茨の生える新畑は、谷から頂へ向けて、ところ斑に黝んでいた。梅三爺の、一坪四銭五厘で拓く開墾区域は、谷のせせらぎに臨んで建った小屋の背後から続いていた。今は緑の草いきれ。はちきれるばかりの精力に満ちた青草は、小屋の裏から起こるなだらかなスロープを、渦を巻き巻き埋めつくしていた。青草の中には紅紫の野薊の花が浮かびあが…