みかん
初出:「随筆」1927(昭和2)年2月号
書き出し
一お婆さんはもう我慢がしきれなくなって来た。けれども彼女は、しばらくの間を薄い襤褸布団の中で、ただ、もじもじしていた。厚い板戸を隔てた台所の囲炉裏端では、誰か客があるらしく、しきりと太い話し声がやりとりされている。折々大きな笑い声も洩れて来る。慥かに誰かが来ているらしい。お婆さんは布団からそおうっと顔を出して見た。併しお婆さんは、また躊躇した。そして室の中を見廻した。室の中にも晩秋の寂寥は感じられ…
8eb05d040692さんの感想
哀しい話。唯一自分に優しかった人が居なくなるのは辛い…