青空文庫

「ふるさとに寄する讃歌」の感想

ふるさとに寄する讃歌

ふるさとによするさんか

――夢の総量は空気であつた――

――ゆめのそうりょうはくうきであった――

初出:「青い馬 創刊号」岩波書店、1931(昭和6)年5月1日

坂口安吾16

書き出し

私は蒼空を見た。蒼空は私に泌みた。私は瑠璃色の波に噎ぶ。私は蒼空の中を泳いだ。そして私は、もはや透明な波でしかなかつた。私は磯の音を私の脊髄にきいた。単調なリズムは、其処から、鈍い蠕動を空へ撒いた。私は窶れてゐた。夏の太陽は狂暴な奔流で鋭く私を刺し貫いた。その度に私の身体は、だらしなく砂の中へ舞ひ落ちる靄のやうであつた。私は、私の持つ抵抗力を、もはや意識することがなかつた。そして私は、強烈な熱であ

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