青空文庫

「木枯の酒倉から」の感想

木枯の酒倉から

こがらしのさかぐらから

――聖なる酔つ払ひは神々の魔手に誘惑された話――

――せいなるよっぱらいはかみがみのまのてにゆうわくされたはなし――

初出:「言葉 第二号」「言葉」発行所、1931(昭和6)年1月1日

坂口安吾29

書き出し

発端木枯の荒れ狂ふ一日、僕は今度武蔵野に居を卜さうと、ただ一人村から村を歩いてゐたのです。物覚えの悪い僕は物の二時間とたたぬうちに其の朝発足した、とある停車場への戻り道を混がらがせてしまつたのですが、根が無神経な男ですから、ままよ、いい処が見つかつたらその瞬間から其処へ住んぢまへばいいんだ、住むのは身体だけで事足りる筈なんだからとさう決心をつけて、それからはもう滅茶苦茶に歩き出したんです。ところが

1 / 0