しちがつなのか
初出:「早稻田文學」1910(明治43)年8月
書き出し
朝から蒸暑かつた。とろんとした乳白の雲が低く淀んでゐて、空氣がじとじとして、生汗をかいてゐるやうな日である。少し頭をぼつとさせて、外出先から家に歸りつくと間もなく、有島壬生馬さんの令弟のY君が見えた。これから一緒に「滯歐記念展覽會」を見にゆかないかと云ふことである。この畫の會は、南薫造さんと有島さんとが長い期間の外遊中に制作してためておいた畫幀を、歸朝後はじめて一般に公開して鑑賞させようといふ趣意…