青空文庫

「そめちがへ」の感想

そめちがへ

そめちがえ

初出:「新小説」1897(明治30)年8月5日

鴎外21

書き出し

時節は五月雨のまだ思切悪く昨夕より小止なく降りて、※子の下に四足踏伸ばしたる猫懶くして起たんともせず、夜更て酔はされし酒に、明近くからぐつすり眠り、朝飯と午餉とを一つに片付けたる兼吉が、浴衣脱捨てて引つ掛くる衣は紺にあめ入の明石、唐繻子の丸帯うるささうに締め畢り、何処かけんのある顔の眉蹙めて、四分珠の金釵もて結髪の頭をやけに掻き、それもこれも私がいつもののんきで、気が付かずにゐたからの事、人を恨む

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