とおりま
書き出し
旧幕の比であった。江戸の山の手に住んでいる侍の一人が、某日の黄昏便所へ往って手を洗っていると手洗鉢の下の葉蘭の間から鬼魅の悪い紫色をした小さな顔がにゅっと出た。その侍は胆力が据っていたので、別に驚きもせずに、おかしなものが出たな、と、平気な顔をしていると、その顔は直ぐ消えて無くなった。で、侍は静に室に入っていると、間もなく右隣の邸が騒がしくなった。何ごとだろうと思って耳を傾けていると、玄関口へ走り…
9741e0063ebbさんの感想
古い家には、不可解なことが多い。