青空文庫

「伊賀、伊勢路」の感想

伊賀、伊勢路

いが、いせじ

書き出し

私には、また旅を空想し、室内旅行をする季節となつた。東京の秋景色は荒寥としてゐて眼に纏りがない。さればとて帝劇、歌舞伎さては文展などにさまで心を惹かるゝにもあらず、旅なるかな、旅なるかな。芭蕉も憂きわれを淋しがらせよ閑古鳥といひ、また旅人と我名呼ばれん初しぐれともいつたが、旅にさすらうて、折にふれつゝ人の世の寂しさ、哀れさ、またはゆくりなく湧き來る感興を味はふほど私にとつての慰藉はない。東京は、私

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