青空文庫

「伊賀国」の感想

伊賀国

いがのくに

書き出し

伊賀國は小國であるけれども、この國に入るには何方からゆくにも相應に深い山を踰えねばならぬ。自分はいつも汽車の中に安坐しながら、此の國を通過するのであるが、西から木津川の溪谷を溯つて來るのもいゝし、東から鈴鹿山脈を横斷して南畫めいた溪山の間を入つて來るのも興が饒い。況んや俳聖芭蕉の生地である。吾々日本人の自然觀、人生觀乃至それ等の風物に對する趣味といふやうなものが芭蕉一人の存在によつて、いかに幽邃深

1 / 0