青空文庫

「鬼涙村」の感想

鬼涙村

きなだむら

初出:「文藝春秋」文藝春秋社、1934(昭和9)年12月

牧野信一36

書き出し

一鵙の声が鋭く気たゝましい。万豊の栗林からだが、まるで直ぐの窓上の空でゞもあるかのやうにちかぢかと澄んで耳を突く。けふは晴れるかとつぶやきながら、私は窓をあけて見た。窓の下は未だ朝霧が立ちこめてゐたが、芋畑の向方側にあたる栗林の上にはもう水々しい光が射して、栗拾に駈けてゆく子供たちの影があざやかだつた。そして、見る見るうちに光の翼は広い畑を越えて窓下に達しさうだつた。芋の収穫はもう余程前に済んで畑

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