かいかんウルフごう
初出:「少年倶楽部」1933(昭和8)年2月
書き出し
一時は欧洲大戦の半ば頃、処は浪も煮え立つやうな暑い印度洋。地中海に出動中の日本艦隊へ食糧や弾薬を運ぶ豊国丸は、独逸商業破壊艦「ウルフ号」が、印度洋に向つたといふ警報を受けたので、帝国軍艦「伊吹」の保護を求めて、しきりに無電をかけながら、西へ西へと進んでゐた。前部甲板の日覆の下には、とぐろを巻いたロープを椅子代りに腰掛けた二人の少年が話してゐる。水夫の服装をした少年は下村といつて当年十八歳、もう一人…