うみぼうずのはなし
書き出し
私は子供の時分のことを思ひおこす時、何よりもさきに髯の爺のすがたが目に浮んで来ます。ふさ/\とした長い髯を生してゐましたところから、私は髯のぢい、髯のぢいと呼びなれましたが、今考へて見ますと、ぢいはその頃まだ五十にはなつてゐなかつたはずであります。その長い髯と、眠つてゐるやうな細い目と、皺のよつた顔とが、ぢいをいかにも年よりらしく見せました。髯のぢいは、朝に夕に私の家へたづねて来ました。庭向きの縁…