青空文庫

「月見草」の感想

月見草

つきみそう

旅の情景無聊自然と人間の冥通内省的懐古静謐

書き出し

馬車が深い渓流に沿った懸崖の上を走っていた。はるかの底の方に水の音がする。崖の地肌には雪に、灰色の曇った空がうつって、どことなく薄黒い。疎林がその崖に死んだように立っている。その中に、馬車の轍の跡だけが、泥に染んでいる。私はいま、東北の或る田舎を旅をしているのだが、この地方では、三月の半ば過ぎていると言うのに、まだ空は雪催いだ。私は馬車の窓に倚りかかって、この目馴れない景色を見いっていた。道には人

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