こうはくちりめんぐみ
初出:「サンデー毎日 夏季増刊号」1924(大正13)年7月1日
書き出し
一「元禄の政は延喜に勝れり」と、北村季吟は書いているが、いかにも表面から見る時は、文物典章燦然と輝き、まさに文化の極地ではあったが、しかし一度裏へはいって見ると、案外諸所に暗黒面があって、蛆の湧いているようなところがある。南町奉行配下の与力鹿間紋十郎と云う人物が、ある夜同心を二人連れて、市中をこっそり見廻っていた。丑満時であったから、将軍お膝元の大江戸もひっそりとして物寂しく、二十日余りの晩い月が…