しんさく
初出:「神鑿」文泉堂書房、1909(明治42)年9月16日
書き出し
朱鷺船一濡色を含んだ曙の霞の中から、姿も振もしつとりとした婦を肩に、片手を引担ぐやうにして、一人の青年がとぼ/\と顕はれた。色が真蒼で、目も血走り、伸びた髪が額に被つて、冠物なしに、埃塗れの薄汚れた、処々釦の断れた背広を被て、靴足袋もない素跣足で、歩行くのに蹌踉々々する。其が婦を扶け曳いた処は、夜一夜辿々しく、山路野道、茨の中を※※《…