青空文庫

「古傷」の感想

古傷

ふるきず

初出:「自由律」1932(昭和7)年7月号

書き出し

——私は自分の弱い心を誤魔化す為に、先刻から飲めもしない酒を飲み続けていた。第三高調波を描く放送音楽……蓄電器のように白々しく対立した感情……溷濁した恋情と、ねばねばする空気……『なに考えてんだィ、さあもう一杯』内田君は、兎もすれば沈み勝ちの私を、とろんとした眼で見据えながら、ビールのコップを取上げた。『うーん』私は熱っぽい目を擦りながら、手を出し(あッ……)ドキン、胸の中で音がした。突出されたコ

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