しょくみんふ
初出:「探偵文学」探偵文学社、1935(昭和10)年12月号
書き出し
一(一体、どうしたのだろう……)私は、すくなからず、不安になって来た。あの親友黒住箒吉がまるで、ここ二三ヶ月というもの消息不明になってしまったのだ。私が、自分から「親友」などと呼びかけるのは、聊さかキザだけれど、でも、彼には、あの変屈な金持黒住箒吉には、友だちというものは、この私一人しかいない筈なのだ。黒住と私とは二代続きの、おやじから受けついだ交友であった。彼の父が家に遊びに来た時など、いつも彼…