青空文庫

「腐った蜉蝣」の感想

腐った蜉蝣

くさったかげろう

初出:「探偵春秋」春秋社、1937(昭和12)年8月号

郁二郎44

書き出し

一黄昏——その、ほのぼのとした夕靄が、地肌からわき騰って来る時間になると、私は何かしら凝乎としてはいられなくなるのであった。殊にその日が、カラリと晴れた明るい日であったならば猶更のこと、恋猫のように気がせかせかとして、とても家の中に籠ってなぞいることは出来なかった。さも、そのあたりに昼の名残が落ちているような、そして、それを捜しまわるように、ただ訳もなく家を出、あてどない道を歩いて行くのだ。——そ

1 / 0