青空文庫

「両面競牡丹」の感想

両面競牡丹

ふたおもてくらべぼたん

初出:「ぷろふいる」ぷろふいる社、1936(昭和11)年12月号

酒井嘉七32

書き出し

奈良坂やさゆり姫百合にりん咲き——常磐津『両面月姿絵』一港の街とは申しますものの、あの辺りは、昔から代々うち続いた旧家が軒をならべた、静かな一角でございまして、ご商売屋さんと申しますれば、三河屋さんとか、駒屋さん、さては、井筒屋さんというような、表看板はごく、ひっそりと、格子戸の奥で商売をされている様なお宅ばかり——それも、ご商売と申すのは、看板だけ、多くは、家代々からうけついだ、財産や家宅をもっ

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