青空文庫

「或る女の手記」の感想

或る女の手記

あるおんなのしゅき

初出:「婦人倶楽部」1920(大正9)年12月

書き出し

私はそのお寺が好きだった。重々しい御門の中は、すぐに広い庭になっていて、植込の木立に日の光りを遮られてるせいか、地面は一面に苔生していた。その庭の中に、楓の木が二列に立ち並んで、御門から真直に広い道を拵えていた。道の真中は石畳になっていて、それが奥の築山と大きな何かの石碑とに行き当ると、俄に左へ折れて、本堂へ通じているらしかった。表からは、本堂のなだらかな屋根の一部しか見えなかった。この本堂の屋根

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