青空文庫

「声」の感想

こえ

初出:「宮本百合子全集 第十八巻」新日本出版社、1981(昭和56)年5月30日

喪失と記憶女性の内面恋愛観の相対化叙情的寂寥憂鬱

書き出し

声宮本百合子或、若い女が、真心をこめて一人の男を愛した。そして、結婚し、三年経った。けれども、或日その若い女は、「ああ苦しい、苦しい!可愛い人。私は貴方が可愛いのよ、だけれども苦しくて、息がつけない」と、泣き乍ら、男の傍から逃出して仕舞った。逃げはしたが、女は他に恋した男があったのではない。彼女は、生れた親の家へ戻った。そして、黙って、二粒の涙をこぼし、頭を振り、やがて寂しく微笑んで縁側に坐った。

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