よるのなみ
初出:「女子文壇」1913(大正2)年7月
書き出し
どちらから誘ひ合ふともなく、二人は夕方の散歩にと二階を下りた。婢が並べた草履の目に喰ひ入つてゐた砂が、聰くなつてゐる拇指の裏にしめりを帶びて感じられた。『いつてらつしやいまし。』と、板の間に手をつく聲が、しばらく後を見送つてゐることゝ、肩のあたりにこそばゆい思をしながら、あの女にも嫉妬を持つと民子は自分の胸のうちを考へた。綺麗な女ではない、けれどもそのおとなしさと、少くも自分がここに來るまでの幾日…
19双之川喜41さんの感想
海辺を 多分 恋人同士が 散歩する。心象風景を 浪の 遣り取りに 託し 汐の 香りを 彷彿と させる。描き出して 巧みであると 感じた。