青空文庫

「過去世」の感想

過去世

かこぜ

初出:「文芸」1937(昭和12)年7月

回顧的孤絶異国情緒虚構と真実叙情的怪奇静謐

書き出し

池は雨中の夕陽の加減で、水銀のやうに縁だけ盛り上つて光つた。池の胴を挟んでゐる杉木立と青蘆の洲とは、両脇から錆び込む腐蝕のやうに黝んで来た。窓外のかういふ風景を背景にして、室内の食卓の世話をしてゐる女主人の姿は妖しく美しかつた。格幅のいゝ身体に豊かに着こなした明石の着物、面高で眼の大きい智的な顔も一色に紫がゝつた栗色に見えた。古墳の中の空気をゼリーで凝らして身につけてゐるやうだつた。室内でたつた一

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