青空文庫

「父の手紙」の感想

父の手紙

ちちのてがみ

初出:「婦人朝日」1941(昭和16)年4月号

回顧的家族不和死の受容憂鬱懐古静謐

書き出し

ユリチャン、コレガオトーサマノ、ノッテイルフネデス。片仮名でそういう文句をかいた欧州航路の船のエハガキが、五つの私へ父からおくられて来た。父はイギリスへ行くところで、まだ字の読めなかった娘へも最初のたよりを、そのようにして書いてよこしたのであった。灯がその火屋の中にともるとキラキラと光るニッケル唐草の円いランプがあって、母は留守の父のテーブルの上にそのランプを明々とつけ、その上で雁皮紙を詠草のよう

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