青空文庫

「蠹魚」の感想

蠹魚

しみ

初出:「現代仏教」1924(大正13)年7月号

回顧的孤絶文学批評歴史的背景分析的懐古静謐

書き出し

私は先日来、福島県下にある祖父の旧宅に来ている。祖父の没後久しく祖母独り家を守っていたが、老年になったのでこれも東京に引移り、今は一年の大部分空家になっている。夏の休暇に母が子達をつれて来たり、時折斯うやって私が祖母の伴で来たりする外は。今度は少し長逗留なので、私はこれ迄一向注意を払わなかった亡祖父の蔵書を見る気になった。良いもの、纏ったものは皆東京にうつされ此方に遺っているのは、ちぐはぐな叢書の

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