青空文庫

「雲母片」の感想

雲母片

うんもへん

初出:「女性改造」1924(大正13)年3月号

女性の内面季節の移ろい家族不和静謐内省的叙情的

書き出し

わかい、気のやさしい春は庭園に美しい着物を着せ——明るい時——林町の家の、古風な縁側にぱっと麗らかな春の白い光が漲り、部屋の障子は開け放たれている。室内の高い長押にちらちらする日影。時計の眩ゆい振子の金色。縁側に背を向け、小さな御飯台に片肱をかけ、頭をまげ、私は一心に墨を磨った。時計のカチ、カチ、カチカチいう音、涼しいような黒い墨の香い。日はまあ何と暖かなのだろう。「ああちゃま、まだ濃くない?」母

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