青空文庫

「透き徹る秋」の感想

透き徹る秋

すきとおるあき

初出:「婦人倶楽部」1921(大正10)年12月号

作家の日常内省文学不信自然と人間の冥通分析的叙情的静謐

書き出し

空を、はるばると見あげ、思う。何という透明な世界だろう。晴れ渡った或る日、障子を開け放して机に向っていた。何かの拍子に、フト眼が、庭の一隅にある青桐の梢に牽かれ、何心なく眺めるうちに、胸まで透き徹る清澄な秋の空気に打たれたのだ。平常私の坐っている場所から、樹は、丁度眼を遣るに程よい位置にある。去年の秋、引越して来てから文学に行きつまった時、心が沈んだ時、または、元気よく嬉しく庭に下りた時、幾度この

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