青空文庫

「人造人間事件」の感想

人造人間事件

じんぞうにんげんじけん

初出:「オール読物」文藝春秋、1936(昭和11)年12月

海野十三40
探偵小説文明開化都市の異化怪奇憂鬱静謐

書き出し

1理学士帆村荘六は、築地の夜を散歩するのがことに好きだった。その夜も、彼はただ一人で、冷い秋雨にそぼ濡れながら、明石町の河岸から新富町の濠端へ向けてブラブラ歩いていた。暗い雨空を見あげると、天国の塔のように高いサンタマリア病院の白堊ビルがクッキリと暗闇に聳えたっているのが見えた。このあたりには今も明治時代の異国情調が漂っていて、ときによると彼自身が古い錦絵の人物であるような錯覚さえ起るのであった。

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