夜の靴
よるのくつ
――木人夜穿靴去、石女暁冠帽帰(指月禅師)
――ぼくじんよるくつをはいてさる、せきじょあかつきにぼうしをかぶりてかえる(しげつぜんし)
初出:「思索 第二號」1946(昭和21)年7月15日
横光利一約272分
内省喪失と記憶歴史的背景回顧的憂鬱静謐
書き出し
八月——日駈けて来る足駄の音が庭石に躓いて一度よろけた。すると、柿の木の下へ顕れた義弟が真っ赤な顔で、「休戦休戦。」という。借り物らしい足駄でまたそこで躓いた。躓きながら、「ポツダム宣言全部承認。」という。「ほんとかな。」「ほんと。今ラヂオがそう云った。」私はどうと倒れたように片手を畳につき、庭の斜面を見ていた。なだれ下った夏菊の懸崖が焔の色で燃えている。その背後の山が無言のどよめきを上げ、今にも…
2021/08/14
19双之川喜41さんの感想
捕虜を 秘かに自宅に連れ込んで 腹一杯 食事をさせた男が 召集されて戦地に 赴いた。 その直後に 終戦となり 解放された捕虜は 連日 駅頭で 恩人である男を 待ち続けた。 やっと思いが叶い 敗残兵と嘗ての捕虜は 再開し抱き合ったという。
1 / 0