青空文庫

「爆薬の花籠」の感想

爆薬の花籠

ばくやくのはなかご

初出:「少女倶楽部」1940(昭和15)年6月~1941(昭和16)年6月号

海野十三264
下層階級の描写喪失と記憶孤絶異国情緒叙情的憂鬱静謐

書き出し

祖国近し房枝は、三等船室の丸窓に、顔をおしあてて、左へ左へと走りさる大波のうねりを、ぼんやりと、ながめていた。波の背に、さっきまでは、入日の残光がきらきらとうつくしくかがやいていたが、今はもう空も雲も海も、鼠色の一色にぬりつぶされてしまった。「ああ」房枝は、ため息をした。つめたい丸窓のガラスが、房枝の息でぼーっと白くくもった。なぜか、房枝は、しずかな夕暮の空を、ひとりぼっちで眺めるのがたまらなく好

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