青空文庫

「浮浪」の感想

浮浪

ふろう

初出:「国本」1921(大正10)年5月号

葛西善蔵45
下宿生活作家の日常貧困郷愁回顧的憂鬱静謐

書き出し

一「また今度も都合で少し遅くなるかも知れないよ。どこかへ行つて書いて来るつもりだから……」と、朝由井ヶ浜の小学校へ出て行く伜のFに声をかけたが、「いゝよ」とFは例の簡単な調子で答へた。遠い郷里から私につれられて来て建長寺内のS院の陰気な室で二人で暮すことになつてから三月程の間に、斯うした目には度々会はされてゐるので、Fも此頃ではだいぶ慣れて来た様子であつた。私が出先きで苦労にしてゐるほどには気にし

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