青空文庫

「映画雑感(Ⅳ)」の感想

映画雑感(Ⅳ)

えいがざっかん(よん)

初出:「セルパン」他、1935(昭和10)年2~6月

寺田寅彦44
文明開化文芸批評科学的手法分析的軽妙

書き出し

一商船テナシティこのジュリアン・デュヴィヴィエの映画は近ごろ見たうちでは最もよいと思ったものの一つである。何よりも、フランス映画らしい、あくの抜けたさわやかさが自分の嗜好に訴えて来る。汽車でアーヴルに着いてすっかり港町の気分に包まれる、あの場面のいろいろな音色をもった汽笛の音、起重機の鎖の音などの配列が実によくできていて、ほんとうに波止場に寄せる潮のにおいをかぐような気持ちを起こさせる。発声映画の

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